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注文住宅でよく聞くウッドショックとは?
そもそもウッドショックとはなに?
ウッドショックとは、2021年に入ってからの木材高騰を、オイルショックになぞらえた呼称です。まずは、ウッドショックとは何か、何故起こったのかを解説していきましょう。
アメリカの事情
アメリカでは超低金利政策によって住宅購入ブームが起きていました。そこへ2020年の新型コロナウイルスの感染拡大で、リモートワークが普及。市民が郊外へ移住するための住宅を購入したり、家をリフォームしたりする動きが加速します。
さらに、アメリカでは山火事が頻発し、木材が不足気味だったこと、コロナ禍で製材所が休業を余儀なくされたことなどもかさなり、木材の需給バランスが崩れて世界的な建築用木材の不足、高騰に繋がったとみられています。
中国の事情
いち早くコロナ禍が収束に向かった中国では、経済活動が活発化したために不動産販売が増加しました。 中国での住宅建築ラッシュも、世界的な木材不足や価格高騰の大きな原因となっています。
コロナ禍による木材輸送の事情
コロナ禍によって世界的に物流が寸断されました。感染防止のためにロックダウンが各国で行われ、移動が制限されたこともあり、陸上輸送でも海上輸送でも封鎖されたのです。
さらに新型コロナウイルスの影響によって、世界的にコンテナ輸送の需要が減少。コンテナ生産量が低下したことで、木材の輸送も困難となったことも一因とされています。
また2021年3月にスエズ運河で起こったコンテナ船座礁事故も、少なからずウッドショックへの影響を与えていると言えるでしょう。
ウッドショックが住宅業界に与えている影響とは?
日本に限らず、世界的に木材不足の今、住宅業界に与えている影響はどのようなものでしょうか。
住宅用の木材不足
日本の住宅メーカーが使う木材は、6割強が輸入材です。 戦時中の森林伐採、戦後の住宅需要拡大、林業の衰退などにより、国内の木材は減少。木材は植林から30年以上経たなければ市場に出せないため、海外からの輸入に頼るようになりました。
今回のウッドショックでは、輸入材に頼ってきた日本の住宅事情にも大きく影響を与えているのです。
林野庁『令和元年木材需給表の公表について』(https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/kikaku/200930_30.html)
木材の高騰
当然ですが、数が少ない物の価格は上がります。ウッドショックによって輸入材が入らなくなると、木材の価格も高騰。通常より1棟あたり100万円以上も値上がりするとも言われており、これまでの相場で予算を組んでいると、オーバーしてしまうことになります。
経済産業省『新型コロナがもたらす供給制約;ウッドショックの影響』(https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20210719hitokoto.html)
納期の遅延
2021年6月〜7月に国土交通省が行った調査によると、「木材の供給遅延が生じている」と回答した中小工務店は94%にも上りました。 木材不足によって住宅建築工事そのものに遅れや、新規契約の見送りが起こっており、工務店自体も経営が苦しい状態であるようです。
国土交通省『中小工務店における木材の供給遅延の影響について』 (https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_house_tk4_000080.html)
ウッドショックが注文住宅を検討している人に与える影響とは?
注文住宅を建てたいと考えている人に、ウッドショックが与える影響とはどのようなものでしょうか。
着工時期の遅延
木材の価格が高騰するだけでなく、不足していることが、住宅建築において重大な問題となっています。木造住宅が多い日本では、各施工会社が国産木材を独自ルートで入手したり、代替可能な木材を使ったりと、対策を講じており、まだ深刻な着工の遅れはありません。
しかしながら、すでに着工が遅れる可能性は充分に考えられる状況であり、着工時期や引渡し時期に影響を及ぼすことは起こりえるでしょう。
せっかく土地を購入したのに、着工できないという可能性もあるので、慎重に時期を検討したいところです。
住宅の施工価格が高くなる
輸入木材の価格が高騰すれば、輸入木材を使った木造の家は施工価格が高くなるのは理解できます。しかし全体的な木材の不足により、国産木材の値段にも価格高騰の影響が起こっています。
一般的に、木材住宅の建築にかかる費用の中で、材料費としての木材が占めるのは1割程度。3,500万円の本体価格だとしたら、350万円が木材費ということになります。
ウッドショックの前と後の輸入木材の値上がりを見ると、約1.5倍に跳ね上がっています。350万円の木材費が525万円になり、これまで企業努力で値上げを抑えてきた施工会社でも、価格を上げざる絵を得なくなってきています。
日経ビジネス『住宅業界遅う「ウッドショック」3ヶ月で木材価格1.5倍に』(https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00145/051400035/)
注文住宅・住宅購入はどう判断すればいい?
ウッドショックの今、注文住宅を建てたい、住宅を購入したい場合、どう判断すればよいのでしょう。
資材や構造の変更をする
注文住宅のメリットのひとつは、設計などの自由度が高いこと。しかし、使いたい木材が高騰している、または不足している場合には、木材の種類を変更するか、木材ではないものに変更するという調整ができます。 注文住宅だからこそできる、対処の仕方と言えるでしょう。
木材にこだわりがあり、種類も変えたくないという場合は、施工会社や設計しに相談して梁の数を減らしたり、床面積を少なくしたりするといった変更をするのも1つの手段です。
すでに売り出されている分譲一戸建てを購入
注文住宅にこだわらず、すぐに戸建てを購入する必要がある人は、すでに売り出されている分譲一戸建てであれば、ウッドショックによる価格の変動はないと考えられます。
さらに新築にこだわりがなければ、中古一戸建てにすれば現在の木材価格の影響を受けることはありません。築浅の中古物件であれば、機能性や耐震性、素材などでも新築と遜色ない物件が見つけられるでしょう。
施工や購入の時期を再検討する
ウッドショックの最中に注文住宅の新築契約を結んでしまうと、基礎工事を始めたのに木材が手に入らず、工事が中断してしまう事態にもなりかねません。
また、ウッドショックが落ち着けば木材価格は下落するという予測も出ており、価格が高騰している時に慌てて購入すると、かなりの損失をすることになります。
どうしてもすぐに建てなければならない事情がある以外は、ウッドショックの動向を見ながら、施工や購入の時期を再検討しましょう。
注意点や対策できることはある?
ウッドショックへの対策や、注意しなければならないことについてまとめました。
【対策】国産木材を使用している施工会社に依頼する
ウッドショックによって輸入材が手に入りにくくなっています。しかし、元々国産木材のみを使用している施工会社に依頼すれば、ウッドショックによる木材不足の影響を受けません。
ただし、国産木材の方が輸入材より高いため、費用が高くなってしまうのは難点です。
【対策】木造以外の家を建てる
ウッドショックは木材不足や価格の高騰で、木造住宅に影響を与えます。特に木造住宅にこだわっていないのであれば、鉄骨造の家を検討してもいいでしょう。
鉄骨造は、マンションやビルなどに採用されることが多い工法ですが、注文住宅の戸建てでも建てることができます。
ただし、一般的に木造より費用が高くなることが多く、将来的にリフォームや増改築を行う際もコストがかかる傾向にあります。
【注意】「すまい給付金」と「住宅ローン減税」に影響
ウッドショックにより納期が遅れることで特に注意したいのは、「すまい給付金」と「住宅ローン減税」についてです。
2021年1月26日、すまい給付金の改正が行われ、契約期限と入居完了期限が定められました。 住宅購入の契約期限は20212年9月30日まで、入居完了期限は2022年12月31日までです。 工期や納期の遅れで期限内に収まらないと、給付金を受け取れなくなってしまいます。
また、住宅ローン減税も2022年12月31日までに居住開始すれば、控除期間が3年延びるので、納期や居住開始できる日時には注意しましょう。
【注意】ウッドショックを理由に購入を急かす
ハウスメーカーによっては、ウッドショックに乗じて住宅の購入を急かしたり、不自然な値上げをしてきたりすることがあります。 基本的にウッドショックを理由に購入を急がせることはないので、他の業者とも比較しながら悪質な業者には注意しましょう。 値上がりするのは仕方ないとしても、相場を知っておくことで、業者の言う金額が妥当なものかどうか判断することができます。
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